2023年7月28日、マレーシア統計局から「Household Income Survey Report 2022」と「Statistics on Household Expenditure」が発表された。
【世帯】
まず、2022年におけるマレーシアの総世帯数は790万世帯となり、2019年から60万世帯の増加となった。世帯人数については、2019年の3.9人から2022年は3.8人へと減少、核家族化が進行している状況にあると考えられる。さらに、世帯における平均所得者数については、2022年は2019年と同じ1.8人であり、共働き世帯が一般化していると見ることができる。
マレーシアの世帯において主要所得はほぼ有給職からとなっており、全所得の62.8%を占め、2019年の調査時よりも拡大している。
【年齢別所得】
世帯主の年齢別で世帯所得を見ると、平均所得が最も高いのは40~44歳の9,507リンギットであり、30~64歳の所得は全体平均(8,479リンギット)を上回った。中央値で見ても、最も高いのは40~44歳の層で7,384リンギットとなり、30~64歳の中央値は全体値(6,338リンギット)を上回った。
【州別所得】
州別の世帯平均所得では、クランバレーの所得が際立って高い状況となっている。特に、プトラジャヤとクアラルンプールは1万3,000リンギット超の水準であり、これはクランタン州の約2.8倍にもなる。CAGRでみると、セランゴール州が4.1%と最も高く、2022年は1万2,000リンギット超となった。また、マレーシア平均より高かったのは、クランバレーとジョホール州のみとなっている。
次に中央値でみると、クアラルンプールとプトラジャヤはいずれも1万リンギット超となり、クランタンの約2.8倍であった。CAGRでみると、セランゴール州が6.5%と最も高く、1万リンギット弱を記録。また、マレーシア全体の数値より高かったのはクランバレーとセランゴール州、ラブアン、ジョホール州、ペナン州となっている。
【民族別所得】
民族別の世帯所得をみると、中国系の平均所得が1万656リンギットで最も高く、これはブミプトラ(7,599リンギット)の1.4倍、インド系(8,950リンギット)の1.2倍となっている。中央値で見ても、中国系の8,167リンギットに対して、ブミプトラは5,793リンギット、インド系6,627リンギットと大きな差が生じている。
また、中国系とインド系については、2万リンギット以上の層も各々10.2%、6.1%と割合が高く、中間層と富裕層の2極化が進んでいる状況を見ることができる。
【日本とマレーシアの所得比較】
1995年、マレーシアと日本の所得格差(年収ベースで計算)は約9.5倍と大きな開きがあったものの、日本の長期に渡る経済停滞が続く中、マレーシアは2000年代より高い経済成長を続けたこともあり、2022年にその格差は約2.1倍にまで縮小した。こうしたマレーシアの所得水準の高まりから、労働集約産業はマレーシアから撤退する状況が顕著となっている。この背景には、堅調な経済成長とともに、最低賃金導入による所得上昇を挙げることができる。
仮定として、これまでの状況が今後も継続するものと想定した場合、マレーシアは2035年に中央値、2037年に世帯平均所得で日本を逆転する可能性もある。これには、マレーシアが中所得国の罠を回避するため、知識集約産業などの経済構造転換に成功し、経済成長を維持する必要がある。
【家計支出構成】
2022年における家計支出額は5,150リンギットとなり、最も多くの割合を占めたのが「住宅、水道、電気、ガス、その他の燃料」で1,193リンギット(23.2%)であった。マレーシアにおいても、ロシアによるウクライナ侵攻を機にエネルギー価格の上昇を招いており、電気料金などの公共料金は値上げが続き、家計負担は増加している。次に大きなウエイトを占めているのがレストラン・宿泊サービスで831リンギット(16.1%)となった。マレーシアでは外食が広く活用されていることから、当該項目の割合が高くなっている。
【州別家計支出】
州別での家計支出では、クランバレーの支出額が他の州より高くなっている。特に、プトラジャヤの家計支出額はサバ州の約2.7倍となる8,987リンギットであった。ただ、家計支出額の低いサバ州だが、CAGRは5.9%と最も高くなっている。
【民族別家計支出】
民族別の家計支出をみると、中国系の平均支出額が6,350リンギットで最も高く、これはブミプトラ(4,773リンギット)の1.3倍、インド系(5,546リンギット)の1.1倍となっている。また、家計支出上位3項目については、各民族で大きな違いは見られなかった。